金魚警報 - 西尾維新先生
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僕と怪異の一年間―西尾維新『暦物語』感想

ファイナルシーズン残り二冊を前にして突如刊行されました『暦物語』。
短編集という体でありながらこれまでのどの巻よりも分厚いというね。

暦物語 (講談社BOX)暦物語 (講談社BOX)
(2013/05)
西尾 維新

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一ヶ月につき一話という構成で語られる、阿良々木暦の怪異に纏わる一年間。
箸休め、閑話休題な一冊でありつつ、次作『終物語』へと続く前振りにもなっており、
「最初の頃と現在とが繋がっていないようにも思えてきたゆえ、改めて阿良々木暦達が過ごした一年を振り返り、繋がりを確認してみたかった」という後書きにもなるほどという感じがしました。
語り手は一冊通して阿良々木暦であり、またエピソード毎に一人のヒロインを配置するというギャルゲーよろしい形式、まさしく暦物語といった趣です。殆どのエピソードがミステリ形式の語り口になっているのですが、提示される謎が「怪異現象」にも見たない「日常レベルの不思議」で一貫しており、『それ町』のミステリ回を彷彿とさせます。それらが単なるミステリで終わらず、寓話の如き体で締める様が非常に心地良く、西尾先生本当にこういうの書かせるとうまいなぁと。そもそも京極堂シリーズのオマージュを短編連作でやってのけた『化物語』の面白さもこういうところにあったんだよね、と再確認させられたりもして。シリーズの長期化で見失われかけていた魅力を今一度見出すことのできる短編集。素晴らしい。

しかしそんなものはさておき、純粋にファンサービスに満ちた短編集であったと言えます。
長らくご無沙汰だった暦とガハラさんの軽妙なやり取りや、忍野メメの長広舌、在りし日の真宵や撫子との丁々発止の掛け合いなど、今後本編でどれだけ見られるかわからない貴重な場面がたくさん拝めるという点も今作の大きな魅力といえましょう。

メタ台詞もバトルもない、暦と怪異の一年間の物語。
本編への補完要素だけでなく、改めて物語シリーズの強固な世界観を強く印象付ける12編であり、
このタイミングでの刊行が非常に意味のあるものになっていると感じました。

『憑物語』では意外性の演出・意表をついた展開というのがまず在りきになっている感が正直ありまして、シリーズとしての一貫性・整合性が失われていくことに若干の危機感を覚えたりもしました。
だもんで今回、12の短編を通して、改めてシリーズに通底する軸を確認できたというのは、
くどいですが本当に良かったと思います。

化物語 PremiumアイテムBOX化物語 PremiumアイテムBOX
(2013/11/21)
不明

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だからどうということもないけど、扉絵のカレンダーで作中時間が2006年であることが明示されましたねぇ。
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終わりに向けて動き始める物語―西尾維新『憑物語』感想

序破急のにあたるエピソードといいますか、ファイナルシーズン三部作の始まりを、そして物語シリーズの終わりを高らかに宣言するかのような、そんな印象を強く受けました。
終わりの始まり、はじまりはじまり。

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(2012/09/27)
西尾 維新

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暦and月火inお風呂!もはや読者サービスなのかなんなのかわからなくなるぐらいにお約束とかした阿良々木兄妹の一線を越えつつ有る関係には様刻・夜月兄妹もびっくりです。そこで繰り広げられる益体のない会話の数々には「またかよ!」と「待ってました!」のダブルバインドに悩まされること請け合い。・・・なんか巻を重ねるに連れて彼らの「一線」のハードルがどんどん高く設定されて行ってるような気がしてなりませんw「一発芸・都条例」をpixivあたりで拝めることを期待しつつ・・・もとい黒ロンとかした月火さんの素敵イラストに期待したいところです。

本筋としては暦の吸血鬼化問題。元に戻る方法はない、と明言された以上、便利設定で済まされてきたこれまでのようには行かないわけで、今後は吸血鬼という特殊能力に頼ることなく問題解決に奔走しなければなりません。もはや自分一人の体ではないと自覚し自己犠牲の精神を改めつつ有る暦。大切な人達を守るのではなく、力を合わせて共に戦う。今後そういう局面を迎えるのかはわかりませんが、人間として怪異に立ち向かわざるをえなくなった暦の決意には非常に燃えます。セカンドシーズンではヒロインたちが自らの暗部と向き合い折り合いをつけるという“成長譚”の側面がありましたが、ファイナルシーズンでは主人公たる暦の成長が描かれていくこととなりそうですね。

そしてこのタイミングで新たな人物、手折正弦。ただでさえ登場人物の少ないシリーズ、しかも忍野や貝木、余弦といった専門家側の人間ということで非常に重要な立ち位置のキャラクターです。そんな重要人物がこうもあっさりと退場させられてしまうというのは中々に衝撃的でした。
シリーズにおける死者の少なさを思えばなおさらです。今回は余接の無感情をベースとした一挙一動に萌える小説(断定)でしたが、最後の最後で人殺しを働いたことで、彼女もまた怪異であるという認識を暦に、そして読者に植え付けることとなりました。よつぎドールの副題に恥じぬ役割を果たしてくれたと言えます。

最後に忍野扇。意味深な発言で物語を混乱させるだけだった彼女の真意も、ここに至って少しばかり見えてきました。「ちゃんとする」という言に人間は人間、怪異は怪異としての役割を重んじろという意味も孕んでいるとすれば『鬼物語』における一連の事件もまた彼女の手引きによるものなのかも知れません。物語の外側から舞台を操ろうと試みる様は、戯言シリーズで西東天がついに成し遂げることのできなかったことでもありますね。しかし作中でアニメがどうのこうのと散々メタな発言を繰り広げてきた代償というか、すでになんでもありになってきた感のあるシリーズではそれほど際立ったキャラクターに思えないのも事実です・・・w
彼女の言う「ちゃんとする」にはどこか変化を嫌うといったニュアンスが感じられます。
西尾作品の主人公達が最後にたどり着くのは「人の道を外れても日の下を歩いて良いんだ」という、異形異端の自分を受け入れてそれでも生きていくという肯定です。(『少女不十分』で主人公の口を借りる形で明言されてましたね。鵜呑みにするのもどうかと思いますが)それを思えば忍野扇は暦に限らず、西尾作品そのものに対する敵と言えなくもありません。余接がラスボスと形容しましたが、やはりそういうことなんでしょう。次巻「おうぎダーク」で踏み込んだお話が読めることを期待しております。ダークってやっぱりくらやみのことなのかな?

雑談からの事件、あっけない幕切れと解決しない問題の余韻、という一連の流れは物語シリーズの様式美ではありますが、無粋な言い方をすれば「置きに来た」かたちになるのが本作だと思います。しかし完結に向かい始めた物語の助走として非常に期待させられるものがあり、そしてその期待に答えてくれるだけの終着点を用意してくれているのだと強く感じました。西尾先生は戯言シリーズ最終作『ネコソギラジカル』について、ずっと思い描いていた終着点に向けて忠実に書いていくだけ、といった旨の発言をかつてしておられましたが、ファイナルシーズンに対してもそういった姿勢が有るのではないでしょうか。

完結した時、物語シリーズというネーミングが作品にとって象徴的な意味を持つような、
そんな終わり方を想像してしまうものです。


心は神化するよもっともっと―西尾維新「囮物語」

この『囮物語』に限って言えば、これまでの『物語』とは若干毛色が違う内容となっております…まあ目先を変えるのが好きな作者なので、そもそも毛色が同じだったことがないという意味ではいつも通りの『物語』なのですが…。ただ、なんとなく棚上げになっていた『千石撫子』というキャラクターにひとつの決着がつくという意味では、やっぱり特別な『物語』なのかもしれません。講談社BOX 西尾維新<物語シリーズ>著者コメントより)


撫子おおおおおおおおおおおおおおおおおお(´;ω;`)(挨拶

著者コメントの真意が分かり茫然自失でございます。
世はまさに大千石時代。

囮物語 (講談社BOX)囮物語 (講談社BOX)
(2011/06/29)
西尾 維新

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そんなわけで「囮物語」感想です。
タイトルが「捕物」とかかってるかと思いきやそんなことはなかったぜ。

「化物語」のアニメで一躍人気青天井、とりわけ「恋愛サーキュレーション」での可愛らしい振る舞いは多くの視聴者を魅了したことでしょう。そんな過剰なまでにピックアップされた「可愛さ」とそれを愛でるファンに対する意趣返しのような物を今回の「囮物語」に感じました。

新章に共通するテーマがあるとすればそれまでの物語で付与された「キャラ」という性質への対峙と決別、みたいな感じだと思うのですが、今回も例にもれず撫子の一人称による内省的な語りで物語は進行します。
こうなるともう阿良々木さん一人称で純粋な冒険物語だった「傾物語」こそが異色に思えてしまう・・・w

大好きな暦お兄ちゃんは彼女持ち、それでも隣に居られたらいいと自分に言い聞かせることで傷つかない選択。
「おまじない」の影響で歪むクラスの人間関係とその修復を担任に任された重圧。
ファンタジー色はやや薄れ日常生活に根ざした問題に苦悩する撫子の様子が本人の語りで明かされていくという、これまでの作品の中でもダントツに暗い作風となってます。物理的に人と触れ合うのが嫌い、しんどいことが嫌い、都合の悪い記憶を改変する。自分自身に無関心だからこそ自らを私ではなく他人事のように「撫子」と呼ぶ。囮物語を楽しめるか否かは、今回初めて明かされた撫子の性格・行動をどこまで理解・共感できるかによって変わってくると思いました。

暦を前にしてあたふたするそんな「可愛い」だけのキャラはもういません。撫子の内面は凶気に満ちていると言っても過言ではなく、中々にえぐいです。読んでいて非常に戸惑ってしまいました。撫子怖い、超怖い。

こうなるともうドラマCDで言ってた「学級崩壊って憧れる」発言が洒落になってませんw
というかこれに限らず、今までギャグっぽく流されてきた撫子の台詞一つ一つが恐ろしい意味を伴ってくるわけですが、全部最初から考えてたんだとしたら西尾先生ぱないの。こういう萌えキャラにあるまじき生々しい要素も含め、撫子と言う存在をを好きでいられるかという分水嶺になりますね。まさに幻想殺し。
でもやっぱり清濁併せ呑んでこそのファンと言えるのではないでしょうか(えらそう

表面的な「キャラ」が多面的な「人物像」として描写されるようになる、というのは物語シリーズ新章に通じるお約束になりつつありますね。教室での演説シーンなんて化物語の時点の撫子からはとても考えられない発言が飛び出しまくりで圧倒されました。

中盤の月火ちゃんの悪役っぷりが恐ろしくも清々しかった。友達だからこそ正面から詰問した、というほどに二人の中はかつてほど良好でもないのでしょう。撫子の悩みって簡単にいえば周りからかわいいかわいい言われるのにはうんざりだよーって話だけど、これが読者に対する当て擦りだとすれば怖すぎる(考えすぎ

好きな人のそばに居られたらいいという撫子に対して「手の届かないところにいる人間に恋をすれば傷つかずに済むもんね」とばっさり、前髪もばっさり。心のうちを暴かれ、周りの視線を遮断するための前髪も無くなり身を守る術がなくなった瞬間です。この辺のシーンはちょいちょいコミカルな台詞を挟んだりしてるのですけど会話の内容が内容だけに全く和みませんね・・・返って重々しさを強調してる気さえします。このあと暦が月火ちゃんに対して行った「十代と東京都民にはお見せできないこと」が凄く気になるところですが続きは薄い本で!

終盤の怒涛の展開が素晴らしかったです。
かねてよりラスボスと評されていた撫子が本当の意味で物語のラスボスになってしまう展開は斜め上過ぎた。
囮物語のサブタイトルは「なでこメデューサ」ですがまさか撫子がメデューサと化すなんて・・・嫉妬が殺意に変わるなんて中学生の片想いの結果としてはあまりに恐ろしい。そんで怪異と同化し神となった撫子は実際に暦と忍を殺しにかかるわけですからとんだ愛憎劇ですよ。

お札(紙)で髪が蛇になり神になった。噛み付いて、神憑いた。言葉遊びもしっかり生きてるあたりはさすが。
またややこじつけ気味ですが囮と言う字を化=怪異を体内に取り込んだという象形に見立てることもできますね。

思えば猫白における羽川さんも嫉妬が原因で怪異を生み出してしまったわけですが、きっちり失恋することで解決を図った羽川さんと、絶対にかなわない恋を永久に続けるために殺すという歪んだ選択肢をとった撫子は対照的なんですね。

そしてついに撫子とひたぎさんの解逅。電話越しとは言え読んでいて背筋が凍えます。
恋人が殺されようとしてるにもかかわらずひたぎさんの肝っ玉かあさんぶりが凄い。
ここからの展開はさながら連載漫画の引きを見ているようで盛り上がりが凄いですね。
あなたの殺意が一時の感情ではない本物なら卒業式を迎える半年後まで待ってくれ→おk→待て次号!
小説って一冊でひとつの出来事が終わりまで語られるのが普通と思ってたのでちょっと驚きましたけど、撫子が人でなくなる物語だと考えれば問題ないでしょう。

半年後の最終決戦ではやはりどちらかが死ぬ結末となるのでしょうか。
一つ言えるのは時系列が卒業式よりもさらに後となる前作「花物語」において暦も忍も生存しているので、パラレルワールド設定でも無い限り彼らの死亡はないでしょう。ちなみに撫子に関する描写は一切無いので・・・えーと、つまりそういうことなのか・・・

しかしパラレルワールド説もあながちあり得ないとは言い切れません。
傾で女子生徒、花で男子生徒として登場した謎すぎる人物忍野扇。今回も女子生徒という形で登場します。
いつも登場しては物語の行く末を知っているかのような意味深な発言をする、さながら世にも奇妙な物語のタモリの立ち位置。
「まだ私は千石ちゃんとは知り合ってなかった」とか「会う順番間違えた」とか。
情報不足ですけど、傾で並行する別世界って存在は明らかになっているので未来からやってきた説もなきにしもあらずかと。


後味の悪い終わり方も含めてとても面白かったです。
これまでの物語での暦視点による刷り込みもあり、過剰に撫子の「可愛い」側面ばかりがピックアップされてきたせいで撫子の鬱々とした内面描写が読者の意表を付くかたちになっているのがさながら人称の違いから起こる叙述トリックのようで、そういう仕掛けにはまるのは楽しいですね。

撫子の繊細な心理描写と後半の展開の大胆な力技が合わさってとても読み応えのある一冊でした。
内容が衝撃的なだけにこれから読まれる方にはネタバレには触れずまっ更な状態で臨んで欲しいです。
ここ読んでる人はもうアウトですけどね!

この物語の行く末がハッピーエンドか否かは半年後の「決戦」が描かれる「恋物語」で明らかになるとのことなので期待です。
奇しくも発売するのも半年後(12月)なんですねー。
物語シリーズでは主要キャラは殺さないといつぞやのインタビューで西尾先生はおっしゃってましたし、暦がこの出来事に関して落とし所を見つけているかのような描写もあったので、正直撫子が死んでしまう可能性は低いと思ってます。ただ人間に戻るか神のままなのか、殺意に変わった嫉妬心に撫子自身がどう折り合いをつけるのか、それを受けた暦はどう動くのかなどなど考えるととても以前のような良好な関係には戻れないと思います。さてどうなることやら。

「カミングスーン、神だけに」

化物語 第四巻 / なでこスネイク 【通常版】 [DVD]化物語 第四巻 / なでこスネイク 【通常版】 [DVD]
(2010/01/27)
神谷浩史、花澤香菜 他

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読み終えてから「恋愛サーキュレーション」の歌詞を見ると恐ろしく内容とリンクしてるんですよね。
時間があればそういうエントリーも書こうと思います。

幽霊の正体見たり枯尾花―西尾維新「花物語」感想

エイプリルフールに普段通りの更新をしてしまったという重い十字架を背負って日々を生きて行く所存です(挨拶

自身が怪異に背負わせた負の感情を取り返すため自己と対峙する「猫物語(白)」は阿良々木視点では決して見られない羽川さんの内なる葛藤が爽やかに時に生々しく描写され、時間遡行で真宵ちゃんが生存している世界を創り上げようと試みた「傾物語」はさながら大長編ドラえもんの様相。化~猫黒において生じた設定・展開上の“ご都合主義”に向き合っていくというのが新シリーズに一貫して通底するテーマだと思ってます。もしくは登場人物がうやむやにしてきた物事に対して折り合いをつけるお話。

今回の「花物語」を読んでより確信的にそう感じたのですけどまぁそういう考察の真似事は今度やるとして。

今作も面白かったよと、声を大にして言いたい!

花物語 (講談社BOX)花物語 (講談社BOX)
(2011/03/30)
西尾 維新

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神原さんの裸足が眩しい表紙が目印。というかよく見たらポニーテールなんですね。
「するがデビル」ということで神原さんが主役。化や偽のようにキャラで展開を引っ張っていくのではなく物語で魅せるタイプで、主役キャラによる一人称、自分の内面と向き合う話、ミステリー小説の語り方を踏襲した点で猫白が最も近い気がしました。阿呆な掛け合いは少なめ。

物語シリーズの特徴として分かりやすい悪役が出てこないんですよね。対立が起こるのは価値観の相違からであって、その中でどう折り合いをつけるかという。今回はまさにそんなお話。傾が地球規模のSF物語だったのに対して今回はあくまで神原個人の内面の変化が中心。動きらしい動きといえばバスケのシーンぐらいなのでもしアニメにするなら画面的に凄く退屈な事になりそうです(笑)


・「お前は正しいことをしたわけでも、間違ったことをしたわけでもないんだから」
神原駿河成長譚とでもいいましょうか。広義の自分探しとも。
私から見た私は他人から見た私とは違う。しかし演じてる自分もどうしようもなく自分であるという二面性がテーマとして先行してる印象を強く受けました。明るく元気いっぱいなキャラとしてこれまで描かれてきたのと対照的に今回の内面描写は終始ダウナーなテンション。読者が抱いていた神原駿河像との相違が今回のテーマにもかかってるような気がしました。今回新たに登場した人物は皆内面の描写は多々あれど口調や性格に分かりやすい「キャラ」がなく、奇人変人オンパレードの西尾作品においてはなかなか珍しいです。そしてこれまでの主要な登場人物はほとんど出てこない。このあたりからもテーマありきで物語を語っていこうとする意図が感じられました。周りから付与された「キャラ」と対峙する点は現実でも通ずる部分がありますね。


・沼地蝋花さん
他人の悩みを解決しつつ、蜜の味たる他人の不幸を味わうことで精神の安定を図るというひねたお方。
多少なりともこの人に感情移入できるかどうかが好き嫌いの分かれ目になるかもしれませんね。一見神原に似ているようで相容れない考え方の持ち主という立ち位置が面白いです。いーちゃんに対する零崎人識とか、めだかちゃんに対する球磨川とかそんな感じ。もう一人の主役と言えますね。蝋花の物語だからこその花物語という解釈が一番しっくりきます。神原とちょっといちゃついてたところもあったので百合→花→花物語と言えなくもないですがちょっとそれはあんまり過ぎる!


・時系列とか整理するぜ
神原が高校三年生として新学期を迎えた日からスタート、ということで「傾物語のラストからそのまま続きます」という作者の文言は大嘘でした。わけがわからないよ・・・
これまでのお話が全て3月~8月の出来事だったので今回の花だけ随分と時間が離れてるんですよね。その空白の期間の出来事はまだ見ぬ3作品で語られることでしょう。倒叙的に触れられてるエピソードの中で神原が廃ビル焼失の件に絡んでるかのような物言いがあったので、おそらくこれが猫白と同時進行で起こっていた出来事かと思われます。
今後の3作で語られる・・・と思いたいけど西尾維新だからなぁ(笑)
どこかで触れられると信じて。

ガハラさんは無事大学進学とのことですが、今回の出番といえば間接的に某都条例に噛み付いたぐらいなので「恋物語」での活躍に期待です。羽川さんは紛争地帯で軍用車を乗り回してるとのことで一人だけスケールが違いすぎる。羽川さんの物語はもう完結してるんだろうなぁ。彼女の物語ももっと読みたいです。いやほんと羽川さん大好きなんですよ・・・

・伏線増えたり減ったり
臥煙家と怪異の繋がりがちょっとだけ見えてきましたね。
神原母と貝木が旧知の間柄だったとは、化物語の世界はなかなか狭いようです。

新たに生まれた謎としてはやはり扇君でしょうか。傾では慇懃無礼な女子生徒扇ちゃんとして登場しましたが今回はなぜか男子生徒となってます。傾のこともあってパラレルワールド説を唱えたいところですが、作中で神原が「君って確か女子生徒じゃなかったっけ?」などと言ってたりするのでもうわけがわかりません。刀語に見る人によって容姿が変わる彼我木輪廻という人物がいましたがああいう感じの能力(?)を持った人物なのでしょうか。掴みどころのない言動はめだかボックスの球磨川と不知火を合わせたような雰囲気が漂います。どこかの物語に絡んでくるのか、ただそこにいるだけの存在なのか。
後者ならばまさに「どこにでもいてどこにもいない」怪異の定義と合致することになるけどはたして。

・阿良々木さんかっけー
阿良々木さんもかつて誰でも助けるお人好し行為が正しいのか迷ったりしてました。
悩んで答えを出し問題に立ち向かう、まさに主人公!だったわけですが今作では神原に助言を与える存在なんですね。さながらかつての忍野メメの立ち位置。なぜ自分の危険を省みず他人を助けるのか、という神原の問いに対する解答にはちょっと感動しました。一年の歳月は彼を大きく成長させたようです。かと言って変態性が消え失せたわけではなくむしろ悪化の兆しを見せているので、そういう親しみやすさを含めやっぱり愛すべき存在だと思います。


全体的にエンターテイメント性は薄く、重い話に仕上がってます。それでも読者一人一人が神原や沼地と重ねあわせ共感できる部分があると思うので、そこから何か感じ取ることができたとしたら決して退屈なものにはならないかと。作品としての完成度は高いですね。ひと通り解決した後にもう一波乱起こし最後に大きなオチをつけるという、物語を飽きさせない工夫は健在です。青春小説という括りが正しいのかはわかりませんが、一人に少女の成長物語として楽しめました。
結局は阿良々木さんの最後の一言に集約されていると言えましょう。

「お前は青春をしたんだ」

単位貰うために土下座しても、妹溺愛してても、ニュービートル乗り回してても、
やっぱり阿良々木さんは立派な主人公だよ!

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