金魚警報 - 中山敦支先生
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変の大胆・恋の繊細「9速眼球アクティヴスリープ -中山敦支短編集-」感想

「ねじまきカギュー」1巻と同時発売された中山敦支先生の短編集です。

かつてサンデーで連載されていた「トラウマイスタ」をちらちら流し読みしてた程度で特に作者のファンというわけでも無いのですけど、なんかかっこいいタイトルとスタイリッシュなデザインの表紙に惹かれてしまいましてですね。

タイトルは中山先生のブログ名に由来してるんだとか。

9速眼球アクティヴスリープ―中山敦支短編集 (ヤングジャンプコミックス)9速眼球アクティヴスリープ―中山敦支短編集 (ヤングジャンプコミックス)
(2011/06/17)
中山 敦支

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◆「ミュータントキングダム」
獣医師を目指し名門校に入学した森田イワンは「ミュータント科」の生徒達と彼らの扱う突然変異の動物と出会う。
彼らとの交流の中で異形の動物に対して抱いていた偏見を反省し、ミュータント科への転科を決意するお話・・・
って書くとなんか暗いな。「異形」とか「偏見」とか「命」とか、割と現実に根ざしたちょっと重いテーマが設定されていますが、ポップな絵柄も相まってファンタジックな世界観なので上手く中和されてる感じです。

明るくて元気なキャラクター九里アグリちゃん。おまけに語尾が「~っち」。
このキャラ付けが主人公を腐れゴミ虫と切って捨てるシーンをいい感じに引き立たせてますね。
マンホールから顔を覗かせるアグリちゃん可愛い。88mm対戦車麻酔砲構えるアグリちゃんかっこいい。

話の構成も上手いので読みやすいです。
異質な存在だったミュータント科の活動が徐々に明らかになり、彼らの根底にあるのが「揺るぎない命への愛」を理解し、最終的に自らもそうありたいと願う。「生物のなりぞこない」と断言する校長が森田君と対照的になっているのが面白いです。
さっきまで彼も「そっち側」だったわけで。
主人公にとって何かよくわからないものが次第に明らかになっていく物語構成は自然と読者も同じ視点に立つことになるわけで、だからこそ最終的に森田君がとった行動にある種の爽快感を覚えるんじゃないでしょうか。爽やかな読後感!
作者のあとがきを読むとまた違った印象をうけるかもしれませんねー。

◆「恋のスーサイド」
ホラーな見た目の店長が好意を向けるのはバイトの曽根崎さん(表紙の女の子ですね)。そんな恋を成就させるためのお膳立てを半ば強制的に任された主人公蒼月君。でも実は曽根崎さんが好意を向けるのは蒼月君で・・・この矢印一方通行な関係を上手く利用したコメディに仕上がってます。秀逸な悲喜劇。
蒼月君の謎の恋愛理論を駆使して不器用なアプローチを試みる店長が何とも滑稽、でも不思議と応援したくなる。

ある意味ホラーなオチには笑ってしまいましたが真に怖いのは作者の「実話です」の文字ですよ・・・アッー
あと店長が告白し切る前に無理ごめんなさいと即答する曽根崎さんも相当怖いです。目が怖いよ目が。
ところで恋のsuicide(自殺)ってタイトルは美人の曽根崎さんに好意を向けられながらも店長とくっつける選択をした蒼月君の行為を指してるんでしょうか。いや最後のページを見るにこれは・・・。
シーサイドでスーサイド!

◆「禁断ワンダーラバー」
今回の三作品の中でメインとなるのがやっぱりこの作品ですよ。うんちょっとこれは素晴し過ぎた。

キャッチコピー通りの変愛・変恋です。ちょっと凛堂さん可愛すぎますね。
無表情だった凛堂さんが泣きながら「あたしも・・・好き・・・」ってこのシーンの見開きは反則ですよ!
そんでそのあとしっかりギャグとしてのオチをつけてそれを後編の物語にちゃんと繋いでいくんだからもう凄いのなんの。

前編では無口な子でしかなかった彼女が泣いたり起こったり笑ったり、めまぐるしく変化する彼女の表情に凄く惹きつけられます。
キリンジ君が好意を寄せ始めたのもそういう彼女のギャップ・意外性に翻弄された結果に違いない(断定)。
「あたしなんで女の子に生まれたの」は痛切な心の叫びです。ぞくぞくします。あまり読んだことないのですけど百合漫画って結構こういう葛藤みたいなのが描かれてるんでしょうか。前編の最後のページに描かれてる百合がもうなんともね・・・!

キリンジ君は凛堂さんが好きで凛堂さんはさくらさんが好きでさくらさんはキリンジ君を応援しててキリンジ君は凛堂さんの恋を応援することになるという、ある意味本末転倒な円環構造が面白すぎる。この三人のの関係はもう少し見ていたいです。でも
「彼女のことをもっともっと知りたいと思っている」
というキリンジ君が自身の恋心に気づいたところで締め。凄くいい終わり方だと思います。

とても甘酸っぱくややアブノーマルな恋愛物語を巧みな演出と構成力で仕上げた読み切り作品、にやにやでドキドキで本当に面白い漫画でした。



そんなわけで三作品ともとても楽しく読むことが出来ました。
恋する乙女の繊細な心情とアクションシーンの大胆さ、静から動に至る描写が凄く魅力的だと思います。
一度火が点いたらあとはジェットコースター式、まさにページを捲る手が止まらない状態でラストまで一気に読めてしまいました。
そして読み終えた時の、漫画全体を支配してる圧倒的な熱量から解放されて一息つく瞬間がとても心地良いのです。
小説では味わえない漫画の醍醐味ですね。

なんだかまとまりのない感想になってしまいましたが、一言で言うと強い女の子万歳!


「ミュータントキングダム」は集英社のサイトで読めるようなので気になった方はぜひどうぞー。
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