金魚警報 - 2011年07月
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そして家族関係は一歩前進「高橋留美子傑作集 運命の鳥」

どこにでもいそうな中年夫婦を主役に据え、様々な外的・内的要因によって揺らぐ家族関係をコミカルに時にドラマチックに描いた「高橋留美子劇場」待ちに待った四冊目が刊行されました。前の巻からもう6年も経つんだなぁとしみじみ以下感想。

高橋留美子傑作集 運命の鳥 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)高橋留美子傑作集 運命の鳥 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)
(2011/07/15)
高橋 留美子

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◆料理を震源とする夫婦関係の微震「ポジティブ・クッキング」
目を輝かせる妻が随分可愛らしいなおい。妻が家事疲れから料理教室に逃避していたことを知った夫は、妻の作る料理においしいと感想を述べるようになりましたといういい話です。夫婦関係に亀裂を入れるのが料理なら繋ぎ止めるのもまた料理という。捨てられるんじゃないかと危惧する夫と意図せず思わせぶりな言動で翻弄する妻のすれ違いっぷりが悲しくも楽しいのです。しかし留美子先生の漫画世界に液晶テレビが登場するこの違和感たるや。

◆亡き母と老いた父の不器用な夫婦関係「年甲斐もなく」
多くを語らなかった母の父に対する気持ちが残された品から明らかになるという、こういうお話大好きです。「専務の犬」所収の一篇「茶の間のラブソング」では最後に戸棚から指輪が出てきましたが、こちらは離婚届の下に写真館の予約申込書が・・・不覚にも涙腺をやられました。母は父と結婚したことを後悔してなかったんですねぇ。息子の視点から語ることで客観的な夫婦関係が見えてきてとても完成度の高い作品だと思います。今回の六作品で一番好きなのはこれかもしれません。

◆赤い運命の鳥は幸せの青い鳥なのか「運命の鳥」
この話だけは掲載号を買って読んだので鮮明に覚えてました。運命の鳥は必ずしも不幸をもたらすとは言えないという話。マスターはいつしか「運命の鳥がいる」事自体が不幸なことだと思うようになっていたのでしょう。鳥がいてもいなくても自分で追い払える不幸もある、それをかつての想い人を通して理解したマスターが「少し救われたような気分になった」ところで締め、といういい終わり方です。これからは他人のために力を使おうなんて少年漫画の第一話のようですが、ファンタジーな要素が介入しても地に足ついた人間ドラマとして描き上げる留美子先生の力量に脱帽です。


◆愛憎修羅の炎が燃える玄関先「しあわせリスト」
町内会の集まり、ご近所の家庭事情を把握する事情通のおばさん、火の用心と練り歩く地域住人、町会報。在りし昭和を思わせる強固な結びつきが残る地域で起こる連続放火事件の真相に住人達が迫っていくという、ちょっとした推理小説の趣がありますね。話自体は結構重いのですが主人公のコミカルな独白でいい感じに中和されてます。ご近所の家庭事情に巻きこまれたという意味ではこちらもやはり夫婦の物語と言えるでしょう。高橋留美子劇場に共通するテーマですね。

◆怪文書に翻弄される隣人を愛すべし「隣家の悩み」
怪文書を巻いた犯人は誰だということでこちらも推理小説の様相。上司が犯人だと思わせておいて実はその妻が・・・と思わせておいてさらに実は主人公の妻が・・・というなかなか凝った構成になってますね。あ、ゆかりんは可愛いと思います。

◆俺の妻と姉が修羅場すぎる「事件の現場」
実家に帰ったら既に弟夫婦の住居になっていて、かつてと変わってしまった料理の味や生活習慣に戸惑う姉の気持ちは凄くわかります。そして自分の家だからこれまでと同じルールを通す妻の言い分もごもっともで、なんというか人間関係の軋轢って一方が悪なんてことはなくてこういう小さな価値観のずれから生じるんだろうなぁという何かリアルな怖さを感じましたが、些細なきっかけから仲直りしてしまうあたりにもある種の生々しさを見た気がします。教訓めいてるといえば言いすぎですが、色々考えさせられるものがありました。それはこのお話に限らず今回の六篇全てに。


中年のおっさんもおばさんも老人も息子も娘も、キャラに留まらない確かな人物像を作品ごとに創り上げ、夫婦や家族といった普遍的なテーマでこれだけ色合いを異にした人間ドラマを描ききるというのは本当にすごいと思います。巧みな物語の構成でとても読みやすくぐいぐい惹きつけられてしまう。そしてどこかしんみりとした読後感を残し幕を閉じるという、もはや職人芸の域と言っても過言ではありません。高橋留美子先生の真骨頂は短編にあり!


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