金魚警報 - 幽霊の正体見たり枯尾花―西尾維新「花物語」感想
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幽霊の正体見たり枯尾花―西尾維新「花物語」感想

エイプリルフールに普段通りの更新をしてしまったという重い十字架を背負って日々を生きて行く所存です(挨拶

自身が怪異に背負わせた負の感情を取り返すため自己と対峙する「猫物語(白)」は阿良々木視点では決して見られない羽川さんの内なる葛藤が爽やかに時に生々しく描写され、時間遡行で真宵ちゃんが生存している世界を創り上げようと試みた「傾物語」はさながら大長編ドラえもんの様相。化~猫黒において生じた設定・展開上の“ご都合主義”に向き合っていくというのが新シリーズに一貫して通底するテーマだと思ってます。もしくは登場人物がうやむやにしてきた物事に対して折り合いをつけるお話。

今回の「花物語」を読んでより確信的にそう感じたのですけどまぁそういう考察の真似事は今度やるとして。

今作も面白かったよと、声を大にして言いたい!

花物語 (講談社BOX)花物語 (講談社BOX)
(2011/03/30)
西尾 維新

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神原さんの裸足が眩しい表紙が目印。というかよく見たらポニーテールなんですね。
「するがデビル」ということで神原さんが主役。化や偽のようにキャラで展開を引っ張っていくのではなく物語で魅せるタイプで、主役キャラによる一人称、自分の内面と向き合う話、ミステリー小説の語り方を踏襲した点で猫白が最も近い気がしました。阿呆な掛け合いは少なめ。

物語シリーズの特徴として分かりやすい悪役が出てこないんですよね。対立が起こるのは価値観の相違からであって、その中でどう折り合いをつけるかという。今回はまさにそんなお話。傾が地球規模のSF物語だったのに対して今回はあくまで神原個人の内面の変化が中心。動きらしい動きといえばバスケのシーンぐらいなのでもしアニメにするなら画面的に凄く退屈な事になりそうです(笑)


・「お前は正しいことをしたわけでも、間違ったことをしたわけでもないんだから」
神原駿河成長譚とでもいいましょうか。広義の自分探しとも。
私から見た私は他人から見た私とは違う。しかし演じてる自分もどうしようもなく自分であるという二面性がテーマとして先行してる印象を強く受けました。明るく元気いっぱいなキャラとしてこれまで描かれてきたのと対照的に今回の内面描写は終始ダウナーなテンション。読者が抱いていた神原駿河像との相違が今回のテーマにもかかってるような気がしました。今回新たに登場した人物は皆内面の描写は多々あれど口調や性格に分かりやすい「キャラ」がなく、奇人変人オンパレードの西尾作品においてはなかなか珍しいです。そしてこれまでの主要な登場人物はほとんど出てこない。このあたりからもテーマありきで物語を語っていこうとする意図が感じられました。周りから付与された「キャラ」と対峙する点は現実でも通ずる部分がありますね。


・沼地蝋花さん
他人の悩みを解決しつつ、蜜の味たる他人の不幸を味わうことで精神の安定を図るというひねたお方。
多少なりともこの人に感情移入できるかどうかが好き嫌いの分かれ目になるかもしれませんね。一見神原に似ているようで相容れない考え方の持ち主という立ち位置が面白いです。いーちゃんに対する零崎人識とか、めだかちゃんに対する球磨川とかそんな感じ。もう一人の主役と言えますね。蝋花の物語だからこその花物語という解釈が一番しっくりきます。神原とちょっといちゃついてたところもあったので百合→花→花物語と言えなくもないですがちょっとそれはあんまり過ぎる!


・時系列とか整理するぜ
神原が高校三年生として新学期を迎えた日からスタート、ということで「傾物語のラストからそのまま続きます」という作者の文言は大嘘でした。わけがわからないよ・・・
これまでのお話が全て3月~8月の出来事だったので今回の花だけ随分と時間が離れてるんですよね。その空白の期間の出来事はまだ見ぬ3作品で語られることでしょう。倒叙的に触れられてるエピソードの中で神原が廃ビル焼失の件に絡んでるかのような物言いがあったので、おそらくこれが猫白と同時進行で起こっていた出来事かと思われます。
今後の3作で語られる・・・と思いたいけど西尾維新だからなぁ(笑)
どこかで触れられると信じて。

ガハラさんは無事大学進学とのことですが、今回の出番といえば間接的に某都条例に噛み付いたぐらいなので「恋物語」での活躍に期待です。羽川さんは紛争地帯で軍用車を乗り回してるとのことで一人だけスケールが違いすぎる。羽川さんの物語はもう完結してるんだろうなぁ。彼女の物語ももっと読みたいです。いやほんと羽川さん大好きなんですよ・・・

・伏線増えたり減ったり
臥煙家と怪異の繋がりがちょっとだけ見えてきましたね。
神原母と貝木が旧知の間柄だったとは、化物語の世界はなかなか狭いようです。

新たに生まれた謎としてはやはり扇君でしょうか。傾では慇懃無礼な女子生徒扇ちゃんとして登場しましたが今回はなぜか男子生徒となってます。傾のこともあってパラレルワールド説を唱えたいところですが、作中で神原が「君って確か女子生徒じゃなかったっけ?」などと言ってたりするのでもうわけがわかりません。刀語に見る人によって容姿が変わる彼我木輪廻という人物がいましたがああいう感じの能力(?)を持った人物なのでしょうか。掴みどころのない言動はめだかボックスの球磨川と不知火を合わせたような雰囲気が漂います。どこかの物語に絡んでくるのか、ただそこにいるだけの存在なのか。
後者ならばまさに「どこにでもいてどこにもいない」怪異の定義と合致することになるけどはたして。

・阿良々木さんかっけー
阿良々木さんもかつて誰でも助けるお人好し行為が正しいのか迷ったりしてました。
悩んで答えを出し問題に立ち向かう、まさに主人公!だったわけですが今作では神原に助言を与える存在なんですね。さながらかつての忍野メメの立ち位置。なぜ自分の危険を省みず他人を助けるのか、という神原の問いに対する解答にはちょっと感動しました。一年の歳月は彼を大きく成長させたようです。かと言って変態性が消え失せたわけではなくむしろ悪化の兆しを見せているので、そういう親しみやすさを含めやっぱり愛すべき存在だと思います。


全体的にエンターテイメント性は薄く、重い話に仕上がってます。それでも読者一人一人が神原や沼地と重ねあわせ共感できる部分があると思うので、そこから何か感じ取ることができたとしたら決して退屈なものにはならないかと。作品としての完成度は高いですね。ひと通り解決した後にもう一波乱起こし最後に大きなオチをつけるという、物語を飽きさせない工夫は健在です。青春小説という括りが正しいのかはわかりませんが、一人に少女の成長物語として楽しめました。
結局は阿良々木さんの最後の一言に集約されていると言えましょう。

「お前は青春をしたんだ」

単位貰うために土下座しても、妹溺愛してても、ニュービートル乗り回してても、
やっぱり阿良々木さんは立派な主人公だよ!

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