金魚警報 - 心は神化するよもっともっと―西尾維新「囮物語」
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心は神化するよもっともっと―西尾維新「囮物語」

この『囮物語』に限って言えば、これまでの『物語』とは若干毛色が違う内容となっております…まあ目先を変えるのが好きな作者なので、そもそも毛色が同じだったことがないという意味ではいつも通りの『物語』なのですが…。ただ、なんとなく棚上げになっていた『千石撫子』というキャラクターにひとつの決着がつくという意味では、やっぱり特別な『物語』なのかもしれません。講談社BOX 西尾維新<物語シリーズ>著者コメントより)


撫子おおおおおおおおおおおおおおおおおお(´;ω;`)(挨拶

著者コメントの真意が分かり茫然自失でございます。
世はまさに大千石時代。

囮物語 (講談社BOX)囮物語 (講談社BOX)
(2011/06/29)
西尾 維新

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そんなわけで「囮物語」感想です。
タイトルが「捕物」とかかってるかと思いきやそんなことはなかったぜ。

「化物語」のアニメで一躍人気青天井、とりわけ「恋愛サーキュレーション」での可愛らしい振る舞いは多くの視聴者を魅了したことでしょう。そんな過剰なまでにピックアップされた「可愛さ」とそれを愛でるファンに対する意趣返しのような物を今回の「囮物語」に感じました。

新章に共通するテーマがあるとすればそれまでの物語で付与された「キャラ」という性質への対峙と決別、みたいな感じだと思うのですが、今回も例にもれず撫子の一人称による内省的な語りで物語は進行します。
こうなるともう阿良々木さん一人称で純粋な冒険物語だった「傾物語」こそが異色に思えてしまう・・・w

大好きな暦お兄ちゃんは彼女持ち、それでも隣に居られたらいいと自分に言い聞かせることで傷つかない選択。
「おまじない」の影響で歪むクラスの人間関係とその修復を担任に任された重圧。
ファンタジー色はやや薄れ日常生活に根ざした問題に苦悩する撫子の様子が本人の語りで明かされていくという、これまでの作品の中でもダントツに暗い作風となってます。物理的に人と触れ合うのが嫌い、しんどいことが嫌い、都合の悪い記憶を改変する。自分自身に無関心だからこそ自らを私ではなく他人事のように「撫子」と呼ぶ。囮物語を楽しめるか否かは、今回初めて明かされた撫子の性格・行動をどこまで理解・共感できるかによって変わってくると思いました。

暦を前にしてあたふたするそんな「可愛い」だけのキャラはもういません。撫子の内面は凶気に満ちていると言っても過言ではなく、中々にえぐいです。読んでいて非常に戸惑ってしまいました。撫子怖い、超怖い。

こうなるともうドラマCDで言ってた「学級崩壊って憧れる」発言が洒落になってませんw
というかこれに限らず、今までギャグっぽく流されてきた撫子の台詞一つ一つが恐ろしい意味を伴ってくるわけですが、全部最初から考えてたんだとしたら西尾先生ぱないの。こういう萌えキャラにあるまじき生々しい要素も含め、撫子と言う存在をを好きでいられるかという分水嶺になりますね。まさに幻想殺し。
でもやっぱり清濁併せ呑んでこそのファンと言えるのではないでしょうか(えらそう

表面的な「キャラ」が多面的な「人物像」として描写されるようになる、というのは物語シリーズ新章に通じるお約束になりつつありますね。教室での演説シーンなんて化物語の時点の撫子からはとても考えられない発言が飛び出しまくりで圧倒されました。

中盤の月火ちゃんの悪役っぷりが恐ろしくも清々しかった。友達だからこそ正面から詰問した、というほどに二人の中はかつてほど良好でもないのでしょう。撫子の悩みって簡単にいえば周りからかわいいかわいい言われるのにはうんざりだよーって話だけど、これが読者に対する当て擦りだとすれば怖すぎる(考えすぎ

好きな人のそばに居られたらいいという撫子に対して「手の届かないところにいる人間に恋をすれば傷つかずに済むもんね」とばっさり、前髪もばっさり。心のうちを暴かれ、周りの視線を遮断するための前髪も無くなり身を守る術がなくなった瞬間です。この辺のシーンはちょいちょいコミカルな台詞を挟んだりしてるのですけど会話の内容が内容だけに全く和みませんね・・・返って重々しさを強調してる気さえします。このあと暦が月火ちゃんに対して行った「十代と東京都民にはお見せできないこと」が凄く気になるところですが続きは薄い本で!

終盤の怒涛の展開が素晴らしかったです。
かねてよりラスボスと評されていた撫子が本当の意味で物語のラスボスになってしまう展開は斜め上過ぎた。
囮物語のサブタイトルは「なでこメデューサ」ですがまさか撫子がメデューサと化すなんて・・・嫉妬が殺意に変わるなんて中学生の片想いの結果としてはあまりに恐ろしい。そんで怪異と同化し神となった撫子は実際に暦と忍を殺しにかかるわけですからとんだ愛憎劇ですよ。

お札(紙)で髪が蛇になり神になった。噛み付いて、神憑いた。言葉遊びもしっかり生きてるあたりはさすが。
またややこじつけ気味ですが囮と言う字を化=怪異を体内に取り込んだという象形に見立てることもできますね。

思えば猫白における羽川さんも嫉妬が原因で怪異を生み出してしまったわけですが、きっちり失恋することで解決を図った羽川さんと、絶対にかなわない恋を永久に続けるために殺すという歪んだ選択肢をとった撫子は対照的なんですね。

そしてついに撫子とひたぎさんの解逅。電話越しとは言え読んでいて背筋が凍えます。
恋人が殺されようとしてるにもかかわらずひたぎさんの肝っ玉かあさんぶりが凄い。
ここからの展開はさながら連載漫画の引きを見ているようで盛り上がりが凄いですね。
あなたの殺意が一時の感情ではない本物なら卒業式を迎える半年後まで待ってくれ→おk→待て次号!
小説って一冊でひとつの出来事が終わりまで語られるのが普通と思ってたのでちょっと驚きましたけど、撫子が人でなくなる物語だと考えれば問題ないでしょう。

半年後の最終決戦ではやはりどちらかが死ぬ結末となるのでしょうか。
一つ言えるのは時系列が卒業式よりもさらに後となる前作「花物語」において暦も忍も生存しているので、パラレルワールド設定でも無い限り彼らの死亡はないでしょう。ちなみに撫子に関する描写は一切無いので・・・えーと、つまりそういうことなのか・・・

しかしパラレルワールド説もあながちあり得ないとは言い切れません。
傾で女子生徒、花で男子生徒として登場した謎すぎる人物忍野扇。今回も女子生徒という形で登場します。
いつも登場しては物語の行く末を知っているかのような意味深な発言をする、さながら世にも奇妙な物語のタモリの立ち位置。
「まだ私は千石ちゃんとは知り合ってなかった」とか「会う順番間違えた」とか。
情報不足ですけど、傾で並行する別世界って存在は明らかになっているので未来からやってきた説もなきにしもあらずかと。


後味の悪い終わり方も含めてとても面白かったです。
これまでの物語での暦視点による刷り込みもあり、過剰に撫子の「可愛い」側面ばかりがピックアップされてきたせいで撫子の鬱々とした内面描写が読者の意表を付くかたちになっているのがさながら人称の違いから起こる叙述トリックのようで、そういう仕掛けにはまるのは楽しいですね。

撫子の繊細な心理描写と後半の展開の大胆な力技が合わさってとても読み応えのある一冊でした。
内容が衝撃的なだけにこれから読まれる方にはネタバレには触れずまっ更な状態で臨んで欲しいです。
ここ読んでる人はもうアウトですけどね!

この物語の行く末がハッピーエンドか否かは半年後の「決戦」が描かれる「恋物語」で明らかになるとのことなので期待です。
奇しくも発売するのも半年後(12月)なんですねー。
物語シリーズでは主要キャラは殺さないといつぞやのインタビューで西尾先生はおっしゃってましたし、暦がこの出来事に関して落とし所を見つけているかのような描写もあったので、正直撫子が死んでしまう可能性は低いと思ってます。ただ人間に戻るか神のままなのか、殺意に変わった嫉妬心に撫子自身がどう折り合いをつけるのか、それを受けた暦はどう動くのかなどなど考えるととても以前のような良好な関係には戻れないと思います。さてどうなることやら。

「カミングスーン、神だけに」

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神谷浩史、花澤香菜 他

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読み終えてから「恋愛サーキュレーション」の歌詞を見ると恐ろしく内容とリンクしてるんですよね。
時間があればそういうエントリーも書こうと思います。
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